「溝切機ってどれを選べばいいの?」
「乗用と歩行型、どっちがいいんだろう?」
値段もそれぞれ違うので溝切機を選ぶときに悩む方は多いと思います。
実は溝切機の選定ミスは、作業効率だけでなく体への負担やコストにも直結します。圃場の規模や土壌の硬さに合っていない機種を選んでしまうと、思ったように溝が切れず、中干しがうまくいかないケースも珍しくありません。
元ホームセンター系の農業資材店で働いていた管理人が、在職中にさまざまなメーカーの溝切機を取り扱い、メーカー営業さんから直接聞いた各モデルの特徴や裏事情、そして農家さんの声などをもとに、溝切機の種類・選び方・おすすめモデルを、どこに忖度することもなく徹底解説します。
この記事でわかること
- 溝切機の3つのタイプ(手押し式・歩行型・乗用型)の違いと特徴
- 経営規模・圃場条件に合った溝切機の選び方
- 主要メーカー(大竹製作所・共立・丸山製作所)の特徴とおすすめモデル
- 中古購入で失敗しないためのチェックポイント
- 溝切機を長持ちさせるメンテナンスのコツ
ちなみに溝切り、中干し作業の重要性ややり方などはこちらの記事で詳しくお話ししています。合わせてお読みください。
溝切機の種類は3タイプ|それぞれの特徴を比較

溝切機の種類は大きく3つに分かれます。それは
- 手押し式
- 歩行型
- 乗用型
の3つです。それぞれのメリット・デメリットをお話していきます。
手押し歩行型(人力タイプ)
エンジンなどの動力を持たず、自分自身の力で押して溝を切る、最もシンプルな構造の溝切機です。簡単にメリットとデメリットをまとめてみました。
メリット
- 低価格
- 超軽量で持ち運びが容易
- メンテナンスが簡単
- 小回りが利く: 小区画の田んぼや変形田、あるいは機械の進入が難しい狭小地での作業に最適です
- 環境や天候に左右されにくい
動力なしのため非常に安価で1万円台〜2万円台程度で購入可能なのがこのタイプです。なので本業でない方や小規模な農家でも手に入れやすいです。またエンジンなどがないので軽量で重量が5kg前後(例:4.7kg〜5.3kg)と非常に軽いため、田んぼへの持ち運びや取り回しが簡単でさらにメンテナンスが綺麗にする掃除くらいです。
作業ベースで考えると、小型で小回りがききやすく、エンジンがないので騒音が気になりません。また雨天でも機械式ではないので問題なしです。
デメリット
- 肉体的な負担が大きい
- 作業に時間がかかる
デメリットはやはり人力で動くために肉体負担が大きいことにあります。溝切りが一番の重労働といわれているのもこれが所以です。ぬかるんだ泥を溝を切って歩いていくのだから当たり前といえば当たり前ですが。そしてもちろん体力次第で作業が進むため時間もかなりかかります。広範囲の田んぼを手動でやろうと思ったら地獄です。
手押し歩行型(エンジン付き)
エンジン付き手押し式溝切機というもので、上の手押し式にエンジンをつけて人力ではなくエンジンで進んでくれるタイプです。手押しで歩きながら操作しますが、小型のエンジン(25cc〜30cc程度)を搭載しており、車輪の駆動力で前進してくれます。こちらもメリット、デメリットを話していきます。
メリット
- 作業負担の大幅な軽減
- 作業スピードと直進性の向上
- 軽トラックへの積載が容易
人力に比べてエンジンで駆動してくれるので、体力的な負担が大分軽減されるのが一番のメリットです。また自走してくれることで作業時間も大幅に短縮できます。重量はエンジンを積むことで重くはなるものの、この後紹介する乗用型よりは軽くなります。
デメリット
- 価格が上がる
- 歩く疲労感は残る
デメリットはやはり人力に比べて価格が大分上がり、大体11万円〜15万円程度が目安となります。そして乗用型に比べるとやはり体力の消費はあります。人力歩行型と乗用型の中間くらいのメリット、デメリットとなるのがこのタイプの特徴です。
乗用型
乗用型は、作業者がオートバイのように機体に跨り、座席(シート)に座ってハンドルを操作しながら溝を切るタイプの溝切機です。主に40cc〜100ccクラスの高出力エンジンを搭載しており、大規模な田んぼでの作業効率を大幅に上げてくれます。
近年では、長時間の作業でも疲労を蓄積させないための防振ハンドルや低シート高を採用したモデルや、一度に2本の溝を切ることができる「二連溝切機」なども登場しています。それではメリット・デメリットを話していきます。
メリット
- 肉体的な負担が劇的に軽減
- 圧倒的な作業スピード
- 崩れにくい溝ができる
- 操作性と旋回性が高い
バイクのようにまたがって操作するため体力が上の2つに比べて大分温存でき、作業効率も大幅にアップします。またきれいな溝も作りやすく、ターンなどの操作性も抜群のものもあります。
デメリット
- 価格が高い
- 重量があり運搬に手間がかかる
- 傾斜地では横転のリスクがある: 重心が高いため、傾斜の急な圃場(8度以上など)で使用する場合は、横転やスリップのリスクが高まるため注意が必要です。
ただやはり値段がだいぶ高く20万円以上は覚悟しなくてはいけません。また重量も重く運搬に手間がかなりかかります。最後にあまりないと思うのですが傾斜がある場所では横転なども注意が必要です。
失敗しない溝切機の選び方|3つの判断基準

では具体的に、どの基準で溝切機を選べばよいのか。メーカー営業さんから聞いた話と、農家さんの実際の選び方をもとに、3つの判断軸を紹介します。
田んぼ規模で決める
結論から言うと、
30a(3反)未満なら歩行型、1ha以上なら乗用型がコスパ面でおすすめ
です。
30a未満の圃場に乗用型を導入しても、年間の稼働時間が短すぎてコスパがいいとはいえず、逆に1haを超える規模で歩行型を使い続けると、体への負担が蓄積し、作業スピードの面でもロスが大きくなります。
メーカーさんや現場の方も、1ha以上を管理しているなら、多少無理してでも乗用型にしたほうが長い目で見てプラスだと体感しているはずです。体が資本な仕事だけに、体を壊してからでは遅いです。
土壌条件に合った溝切板を選ぶ
こちらは上で説明したタイプではないのですが、溝切板(プラウ)の種類となります。土壌の硬さに合っていない溝切板を使うと、溝がきれいに切れなかったり、余計な力がかかって機体に負担がかかります。自分の圃場土壌が
田んぼ土壌タイプ
- 標準
- 湿田
どちらに当たるのか知っておきましょう。例えば有名な大竹製作所さんの溝切り機「のるたん」などでは型番に下記のアルファベットがつくことで、どちらのタイプか判断できます。
- JS
- JK
JS型(標準型)は、普通田から比較的柔らかい圃場まで幅広く対応する万能タイプです。迷ったらまずJS型を選べば大きな失敗はありません。それに比べ、JK型(超湿田用)は、柔らかい土壌でより大きく深い溝を形成するために特化したタイプです。湿田が多い地域ではJK型を使います。
傾斜地では安全性を最優先する
14%(約8度)以上の傾斜がある圃場では、乗用型の横転リスクが高まります。傾斜地が多い場合は、低重心設計の乗用型を選ぶか、あえて軽量な歩行型にする判断も必要です。
主要メーカー別おすすめ溝切機の特徴
資材屋時代に実際に人気のあった機種や話題にあった機種、実際に売れた機種など主要3メーカーの特徴を整理します。
大竹製作所「のるたん」シリーズ|乗用型のパイオニア
大竹製作所は乗用溝切機の有名メーカーの一つです。「のるたん」シリーズは、かき分けた稲が倒れたままにならず、土を崩さずきれいな溝を作る独自の「溝切板」技術に定評があります。
エンジン付きの歩行型KF23とエンジン付きの乗用型NL-1,NR-1、NTH-2、さらに溝を2つ作れるJW-1に分かれています。
乗用型の3機種(NTH-2、NR-1、NL-1)は、搭載する溝切板(標準型のJS型、または超湿田用のJK型)によって機体サイズや重量が異なるため、それぞれ分けて記載しています。
| 機種名 (タイプ) | 溝切板 | 全長×全幅×全高 (mm) | 重量 (kg) | 溝の大きさ 幅/深さ (mm) | 作業速度 (m/sec) | 能率 (a/h) | 使用エンジン(cc) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| JW-1(2連乗用型) | 標準型(JS型) | 1,805×1,480×1,080 | 70.5 | 210 / 110 | 0.7 | 100 | 丸山: 50.1メイキ: 49.4 |
| NTH-2(乗用型) | 標準型(JS型) | 1,340×580×995 | 23.8 | 210 / 110 | 0.8 | 60 | 丸山: 41.5ゼノア: 40.1メイキ: 42.7 |
| 超湿田用(JK型) | 1,365×580×995 | 23.9 | 240 / 120 | 0.8 | 60 | 同上 | |
| NR-1(乗用型) | 標準型(JS型) | 1,210×510×1,020 | 24.6 | 210 / 110 | 0.8 | 60 | 丸山: 41.5ゼノア: 40.1メイキ: 42.7 |
| 超湿田用(JK型) | 1,235×510×1,020 | 24.7 | 240 / 120 | 0.8 | 60 | 同上 | |
| NL-1(乗用型) | 標準型(JS型) | 1,385×370×920 | 19.0 | 210 / 110 | 0.8 | 60 | ゼノア: 40.1 |
| 超湿田用(JK型) | 1,410×370×920 | 19.1 | 240 / 120 | 0.8 | 60 | 同上 | |
| KF23(歩行型) | 標準型(SS型) | 1,180×440×845 | 15.7 | 160〜220 / 80〜130 | 0.6 | 40 ※ | メイキ: 32.6 |
ちなみに乗用型の違いですが
- NL-1:ハンドルが動かない直線タイプ
- NR-1:エンジンが後ろについているタイプ
- NTH-2:最新機種でエンジンが前についているタイプ
となります。
共立|軽さとエンジン始動性で選ぶなら
共立は軽量設計と高いエンジン技術が特長のメーカーです。歩行型の「MKS2620」に代表される、耐久性を維持したままの徹底した軽量化が支持されています。
特筆すべきは「iスタート」機能で、軽い力でエンジンを始動できます。高齢の農家さんや女性でも楽に使える点は、実際に店頭で農家さんに聞かれることが多かったポイントです。
| 機種名 | タイプ | 寸法: 長さ×幅×高さ (mm) | 質量 (kg) | エンジン(排気量) | 溝切幅 / 深さ (mm) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| MKS4321FR | 乗用型 | 1,345×490×1,020 | 25.7 | 2サイクル(42.7cc) | 150〜190 /100〜140 | ハイトルクモデル・操舵機構搭載。プラウ後端角度57°で崩れにくく湿田にも対応。 |
| MKS4302FR | 乗用型 | 1,260×490×1,020 | 24.1 | 2サイクル(42.7cc) | 150〜190 /100〜140 | スタンダードモデル・操舵機構搭載。軽さと操舵性を両立。 |
| MKS4005R | 乗用型 | 1,285×450×1,025 | 21.4 | 2サイクル(42.7cc) | 150〜190 /100〜140 | スピード重視の軽量タイプ。21.4kgと乗用型の中では軽量。 |
| MKS1000R | 乗用型 | 1,260×600×1,070 | 36.0 | 4サイクル(98.0cc) | 110〜210 /130 | 大排気量で粘り強い4サイクルエンジン搭載。 |
| MKS3000 | 歩行型 | 1,280×460×800 | 14.8 | 2サイクル(28.1cc) | 150〜220 /120 | 28.1ccのエンジンを搭載したハイパワー高能率タイプ。 |
| MKS2620 | 歩行型 | 1,280×460×800 | 13.9 | 2サイクル(25.4cc) | 150〜220 /120 | 13.9kgの軽量&本格タイプ。フレームやミッションの軽さを追求。 |
丸山製作所|パワーと走破性を求めるプロ向け
丸山の乗用型溝切機の特徴をいうと
- 乗ったまま旋回可能(左右にステアリング): ハンドルが左右に切れる構造になっているため、機械から降りることなく圃場内での旋回(ターン)が可能です。これにより作業効率が格段にアップします。
- 軽い力でエンジン始動(マジかるスタート): エコエンジン(排気量42cc)を搭載しており、エンジンをかける際のリコイルスタータを軽い引き力で始動できる「マジかるスタート」を採用しています。
となっており、主に快適性を追求したリアエンジンモデル「AMZ」と、スタンダードな「E」の2つのシリーズに分かれています。
田面ライダー AMZ(MKF-A440シリーズ) エンジンの排気ガスが気にならないよう、機体後方にエンジンを配置した「待望のリアエンジンモデル」で、新構造の「アーチ形フレーム」を採用しています。さらに、撥水性を高めた専用シートや、伝動部に振動を低減する「防振ゴム」を搭載しており、乗り心地と快適性が大きく向上しているのが強みです。
田面ライダー E(MKF-A436シリーズ) AMZに対して、より軽量で価格を抑えたスタンダードモデルで質量は23.8kg〜23.9kgとAMZシリーズよりもわずかに軽くAMZと比較して4万円ほど安価に設定されています。
| 機種名(シリーズ) | 仕様 | 機体寸法 (長×幅×高) mm | 質量 (kg) | 溝幅 / 溝深さ (mm) |
|---|---|---|---|---|
| MKF-A440-JS-1(田面ライダー AMZ) | 標準仕様 | 1,210 × 510 × 1,020 | 24.6 | 210 / 110 |
| MKF-A440-JK-1(田面ライダー AMZ) | 超湿田仕様 | 1,235 × 510 × 1,020 | 24.7 | 240 / 120 |
| MKF-A436-JS(田面ライダー E) | 標準仕様 | 1,340 × 580 × 995 | 23.8 | 210 / 110 |
| MKF-A436-JK(田面ライダー E) | 超湿田仕様 | 1,365 × 580 × 995 | 23.9 | 240 / 120 |
溝切機を長持ちさせるメンテナンス3つの鉄則

溝切機は使用期間は短いものの過酷な泥の中で使う農機だからこそ、日頃のメンテナンスが寿命を大きく左右します。長く持たせるために
ポイント
- 使用後はすぐに泥を落とす
- 燃料を空にして保管
- 雨風を避けて保管
となります。詳しくお話ししていきます。
使用後はすぐに泥を落として洗浄する
使用後に泥を放置すると、サビや腐食の原因になります。洗浄後は可動部にグリスアップや防錆処理を行ってください。農家さんの中には「使い終わったらその日のうちに水で流す」を習慣にしている方が多く、そういう方の機械は10年以上現役で動いていました。
長期保管前には必ず燃料を抜く
シーズンオフに入る前、燃料タンクの燃料を抜き取り、キャブレター内の残留燃料もエンジンが自然停止するまで回して使い切ります。燃料が残ったまま放置すると酸化して固着し、翌シーズンにエンジンがかからなくなる原因になります。
保管場所は倉庫に
直射日光や雨風を避けるため、必ず屋根のある倉庫で保管してください。どうしても屋外に置く場合は、厚手のカバーをかけ、地面からの湿気を防ぐためにパレットなどの上に置きましょう。
まとめ
今日のまとめです。
今日のまとめ
- 溝切機の種類は「手押し式」「歩行型」「乗用型」の3タイプ。規模と予算に応じて選ぶ
- 選び方の判断基準は「経営規模(30a未満→歩行型、1ha以上→乗用型)」「土壌条件(JS型・JK型の溝切板選定)」「傾斜地の安全性」の3つ
- 「即日洗浄・燃料抜き・屋内保管」の3つの鉄則で長寿命化できる
溝切機は年に数日しか使わない農機ですが、だからこそ「自分の圃場に合った1台」を選ぶことが重要です。この記事で紹介した3つの判断基準をもとに、経営規模・土壌・安全性のバランスを見ながら最適な1台を見つけてください。

