「せっかく育てた作物が、台風一発で倒れてしまった」「強風で支柱ごとビニールがめくれ上がってしまった」——農業や家庭菜園をやっていると、風による被害は本当に頭の痛い問題ですよね。
特に毎年やってくる台風シーズンや、季節風の強い地域では、「何か対策をしなきゃ」と思いつつ、どんな防風ネットを選べばいいのか、どう張ればいいのか分からず後回しにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
はじめまして。元ホームセンターのような農業資材店で働いていた管理人です。在職中はさまざまなメーカーの防風ネットを扱い、メーカー営業さんから直接聞いた選び方の裏話や、実際に来店された農家さんから「あのネットは良かった」「これは失敗だった」というリアルな声をたくさん聞いてきました。その経験をもとに、防風ネットのメリット・デメリット、正しい張り方、そして失敗しないおすすめの選び方まで、まるごと解説していきます。
この記事でわかること
- 防風ネットのメリット・デメリット
- 防風ネットの選び方
- 具体的な張り方の手順
まずは知っておこう、防風ネットの効果

防風ネットの最大のメリットは、強風での作物や設備へのダメージを大幅に減らせることですが、実はその効果は風対策だけではありません。
防風ネットは「風を完全に遮断する壁」と思われる方が多いですが、造りは「風を和らげながら通す」構造になっています。風を完全にブロックしてしまうと、ネットの裏側で渦を巻く乱流が発生し、かえって作物が傷んだり、ネット自体が強風で破れたりします。そのため適度に風を通すことで、この乱流を抑えつつ風圧を弱める仕組みになっています。
ここで防風ネットの役割を簡単に見ていきましょう。
防風だけでなく防砂・防雪・目隠しにも使える
防風ネットを「目隠し」や「防砂」目的で買う方は少なくありません。海沿いの畑では飛んでくる砂を防ぐため、豪雪地帯では雪の吹き込みを抑えるため、住宅地に近い農地では目隠しのために導入されるケースが多かったです。一枚で何役もこなせるのが、防風ネットの大きな強みです。
風の影響を50〜90%抑制できる
適切な防風ネットを設置すれば、体感で50〜90%の風の影響を抑制できます。しかも、その効果は設置した高さの約10~20倍の範囲まで及びます。つまり高さ2mのネットを張れば、風下側およそ40mの範囲まで風が和らぐ計算になります。一本のネットでこれだけ広いエリアを守れるのは、コストパフォーマンスの面でも大きなメリットです。
防風ネットのデメリット
防風ネットは強風から作物や建物を守るために非常に有効なアイテムですが、特性を理解せずに使用すると、かえって被害を拡大させたり、環境を悪化させたりするデメリット(リスク)があります。
主なデメリットと注意点は以下の5つに分けられます。
防風ネットのデメリット
- 風圧による「支柱ごと倒壊」のリスク
- 通気性低下による蒸れと徒長
- 熱のこもり
- 害虫引き寄せ
- コストとメンテナンス
説明していきます。
風圧による「支柱ごと倒壊」のリスク
防風ネットは風を遮る機能があるため、必然的にネット全体に巨大な風圧(風荷重)がかかります。
- 帆や凧のようになってしまう:目合いが細かすぎる(遮風率が高すぎる)ネットを選んだり、地面との隙間を完全に塞いで密閉してしまうと、ネットが「巨大な帆」のように風を受け止めてしまい、逃げ場を失った風の力で頑丈な支柱ごと折れたり、基礎が引き抜かれたりする危険性があります。
- 猛烈な台風(最大風速25m/s超)の際などは、張ったまま耐えようとすると全壊のリスクがあるため、事前に一部を外したり巻き上げたりする緊急作業が必要になります。
通気性の低下による「蒸れ」や「作物の徒長」
風を弱めるということは、同時に「空気の流れを滞らせる」ことでもあります。
- 風通しが悪くなることで、ハウス内や畑に熱や湿気がこもりやすくなり、夏場は作物がひ弱に育つ「徒長(とちょう)」や、多湿環境による「湿害(病気)」を招く原因になります。
日照不足と「熱のこもり」
防風ネットは光も遮るため、遮光ネットとしての側面も持ちます。
- 日照不足:目合いの細かいものを使うと、太陽光を必要以上に遮ってしまい、作物の生育に悪影響を与えることがあります。
- 黒色ネットの蓄熱:特に「黒色」のネットは紫外線を吸収してネット自体が熱を持ちやすいため、風通しの悪い場所で使用するとかえって周囲に熱がこもり、高温障害を助長するデメリットがあります。
ネットの「色」による害虫誘引などの弱点
選ぶ色によって、それぞれ特有のデメリットがあります。
- 青色・緑色・黄色:ハチやチョウ、カメムシのほか、アザミウマなどの微小害虫を視覚的に誘引して引き寄せてしまう生物学的な弱点があります。
- 白色:熱を反射し明るさを保ちますが、遮光性と耐久性は黒や青に比べてやや劣ります。
- シルバー(銀色):遮熱・遮光のバランスが良いですが、製造コストがかかるため黒や白に比べて価格が高価になりがちです。
設置コストとメンテナンスの手間
防風ネットは「1に補強、2に補強」と言われるほど強度が命です。
- 高い初期費用と労力:風に耐えるためには、単管パイプなどの頑丈な支柱や斜めの「筋交い」、深く強固な基礎工事が必須となり、設置の手間とコストが大きくかかります。
- 積雪や塩害への対策が必要:雪の降る地域では、下部に積もった雪の重み(雪圧)でネットが押し潰されるリスクがあります。また、海岸沿いでは付着した塩分でネットの劣化や金具のサビが進むため、台風後などに真水で洗い流す(フラッシング)メンテナンスの手間がかかります。防風林(樹木)に比べると、ネット単体での除塩効果はやや劣ります。
これらのデメリットを回避するためには、正しく選び、正しく張ることが重要となってきます。それではまずは選び方を学んでいきましょう。
防風ネットの種類と選び方

上でも説明したように防風ネットは、強風を完全に遮断するのではなく適度に風を通しながら勢いを弱め、風の流れを穏やかにするためのアイテムです。
なので防風ネットを選ぶ際は、
選ぶポイント
- 網目の大きさ(目合い)
- 色
- 編み方(織り方)
の3つの要素を組み合わせて、目的や設置環境に合ったものを選ぶことが重要です。
それぞれの種類と選び方のポイントを詳しく解説します。
網目の大きさ(目合い)と遮風率
網目が細かいほど風や砂を防ぐ効果は高くなりますが、その分ネットが受ける風の抵抗(風圧)も大きくなり、支柱が倒壊するリスクが高まります。
- 4mm目(標準・おすすめ): 農業用や家庭菜園で最も一般的に使われるサイズです。風通しを保ちつつ、風の勢いを約30〜33%%防ぐ効果があり、夏場の蒸れや日照不足も防ぎます。迷った場合は4mmを基準にするのがおすすめです。
- 1〜2mm目(防砂・防雪向け): 防風効果が極めて高く(1mmは約60〜70%、2mmは約40〜43%防ぐ)、海岸沿いの飛砂防止や、雪の吹き込み防止などに適しています。ただし、風の抵抗を強く受けるため、単管パイプを深く埋め込むなど、非常に頑丈な支柱の補強が必須です。防雪ネットや防砂ネットとして売っていることもあります。
- 6mm目以上: 風を通しやすいため防風効果は低くなりますが、風圧の負荷が少ないため、簡易的な風よけや小動物よけとして使われます。
ネットの色と付加効果
色は、単なる見た目の問題だけでなく、「遮光・遮熱効果」や「害虫の寄り付きやすさ」に大きく影響します。
- 黒色: 光をよく吸収するため、遮光性と耐久性が最も高いのが特徴です。ただし、ネット自体が熱を持ちやすいため、風通しの悪い場所では熱がこもる(遮熱性が低い)デメリットがあります。
- 白色: 光を反射するため、遮熱効果に優れており、熱中症対策やハウス内の温度上昇抑制に最適です。また、反射光でアザミウマなどの害虫を幻惑して防ぐ効果もあります。
- シルバー(銀色): 黒と白の中間的な性質を持ち、適度な遮光性と遮熱性を備えています。キラキラとした反射光がアブラムシなどを忌避する効果もあります。
- 青色・緑色: 一般的によく使われ、耐久性も高く景観にも馴染みますが、ただアザミウマなどの害虫を誘引しやすいという生物学的な特徴があるため、虫害に注意が必要です。
- 赤色: アザミウマなどの微小害虫は赤色を不都合な色と認識しているため、虫の侵入を防ぐ効果が高く、防虫ネットを兼ねる場合に有効です。基本的に防虫ネットとして売っています。
- ダークブラウンなどの景観色: 住宅地やベランダ、駐車場などで周囲の景観に馴染ませたい場合におすすめです。
編み方・織り方
ネットの構造によって、耐久性や扱いやすさが異なります。
- ラッセル編み: 防風ネットで最も主流の編み方です。軽量で柔軟性があり、ハサミなどでカットしてもほつれにくく、目ずれが起きにくいのが特徴です。
- 平織: 縦糸と横糸が交互に交差しており、摩擦に強くて丈夫です。
- カラミ織・熱融着: 平織とラッセル編みの長所を併せ持つものや、交差部分を熱で溶かして接着しているもので、非常に丈夫でカットしても全くほつれないのが特徴です。
失敗しない選び方のポイント
それでは失敗しないためのポイントを説明していきます。
- 基本は「4mm目」を選ぶ 風を完全に遮断しようとすると、ネットが「帆」のようになって支柱ごと倒壊する原因になります。適度に風を逃がす4mm目を選び、被害を減らす意識を持つことが重要です。
- 目的に応じて色を選ぶ
- 純粋な防風や目隠し、耐久性重視なら:黒、青、ダークブラウン
- 夏の高温対策(遮熱)を兼ねるなら:白、シルバー
- 防虫効果も兼ねるなら:赤、白、シルバー(青や緑は避ける)
- ネットの強度に見合った「支柱の補強」を行う 防風ネットは張り方や支柱の強度が何よりも大切です。目合いの細かいものを選ぶ場合や、強い台風に備える場合は、太い支柱(単管パイプなど)を使用し、斜めに筋交いを入れるなどして基礎を強固にしてください
この3つのポイントを忘れずに選びましょう。
防風ネットの張り方の手順

防風ネットの張り方について、設置の手順と、強風に耐えるための重要なコツを詳しく解説していきます。
防風ネットは
1に補強、2に補強、3に補強
と言われるほど、基礎と張り方の強度が重要です。以下の手順とコツを参考に設置を行ってください。
準備するもの
- 防風ネット(目的に合った目合い・サイズのもの)
- 支柱(直径48.6mmの単管パイプなどが強度があり一般的です)
- 穴掘り器・ハンマー(支柱を打ち込むため)
- 固定具(ロープ、結束バンド、パッカー、クランプ、専用クリップなど)
防風ネットの張り方(固定式)
防風ネットの基本的な設置手順は以下の通りです。
防風ネットの張り方手順
- 位置決め
- 支柱打ち込み
- ネットの仮留め
- ネットの固定
- 調整仕上げ
となっていきます。詳しく説明していきます。
まずは位置決めと穴掘りです。風を防ぎたい場所の風上側(主風向に直角)にラインを決めます。 1〜2m間隔(強風地域ではさらに狭く)で、深さ30〜50cmほどの穴を掘ります。基礎に水が溜まると倒壊の原因になるため、必ず排水性の良い場所を選んでください。
次に支柱の打ち込みと「筋交い」による補強です。掘った穴に支柱を深く差し込み、ハンマーで打ち込んで固定します。 この時、風による横倒しを防ぐため、支柱に対して斜めにパイプを添える「筋交い(斜めブレース)」をクランプでしっかり設置して補強します。
そしてネットのクセ取りと四隅の仮留めを行っていきます。 ネットは束ねられて癖がついているため、事前に対角に引っ張って癖を取ります。 枠の四隅(角)にロープや結束バンドでネットを仮留めし、辺の中間部にも仮留めをしてネットがたわむのを防ぎます。角は縦方向・横方向の両方から引っ張るように固定するとズレを防げます。
続いてロープによる編み込みと固定で本締めを開始します。端の始点を「巻き結び」等でしっかり結んだ後、仮留めを外しながら、支柱(またはワイヤー)とネットを約5cm間隔のピッチで螺旋状にクルクルと巻き付けて固定していきます。
最後にゆがみ調整と本締めです。対面のテンション(張り具合)を確認しながら、網目のラインが真っ直ぐになるよう手で引っ張って調整し、最後に終点をしっかりと結んで完成です。
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失敗しないための「張り方のコツ」
ここで、ネットを長持ちさせ、支柱ごとの倒壊を防ぐためのテクニックやコツをご紹介していきます。
ピンと張りすぎない(1〜2%のたるみを持たせる)
前回の解説の通り、ネットを限界までピンと張ってしまうと、強風時にハトメや編み糸に負荷が集中し、引き裂かれる原因になります。全体の寸法に対して1%〜2%の微小なたるみを持たせることで、風圧を適度にいなすことができます。
地際(足元)は10〜15cm開ける
防風ネットの下部(地面側)を完全に密閉してしまうと、ネット全体が「巨大な帆(凧)」のようになり、行き場を失った風圧で支柱ごと引き抜かれてしまいます。地面との間には10〜15cmの隙間を空け、適度に風を逃がすのが基本です。(※砂の侵入などを防ぎたい場合は、本体とは別に「スカート」となるネットを裾に縫い足し、重りで押さえる加工が有効です)
「5回巻くごと」にテンションをロックする
ロープで螺旋巻きをしていく際、**約5回巻く(5ピッチ進む)ごとにロープを結んでロック(ハーフヒッチなど)**してください。これにより、万が一ロープの一部が擦り切れても、ネット全体が一気にほつれて伝線するのをピンポイントで防ぐことができます。
台風時の「取り外し・再設置」の順番
風速25m/sを超えるような猛烈な台風が来る場合、そのまま耐えようとすると全壊のリスクがあります。その際は、風を逃がすためにネットの一部を開口するか撤去します。
- 外す時の順序:必ず**「風下側 → 中央 → 風上側」**の順に外します。風上から外すと、ネットがパラシュートのように膨らみ大変危険です。
- 張る時の順序:再設置時は逆に**「風上側 → 中央 → 風下側」**の順に行うことで、風下側に弱風の安全エリアができ、作業しやすくなります。
まとめ
最後に、防風ネットの要点を振り返ります。
本日のまとめ
- メリット:風の影響を50〜90%抑制でき、効果は設置高さの約10~20倍まで及ぶ。防風だけでなく防砂・防雪・目隠しにも使える。
- デメリット:目が細かいほど通気性が下がり支柱への負荷が増える。従来品は2〜3年で張替が必要になる場合がある。
- 張り方:四つ角をダブル巻き→中心から角へ編み込み→大型は中間ラインを固定。シワなく強固に張ることが性能発揮のカギ。
- おすすめ:設置場所と目的に合った目合を選び、スカート加工や包みピケット加工で隙間対策をすると効果が格段に上がる。
防風ネットは、選び方と張り方さえ押さえれば、台風や強風から作物を守る非常に頼もしい資材です。まずはご自身の畑や菜園の「風がどこから・どれくらい強く吹くか」を確認し、それに合った目合と加工のネットを選ぶところから始めてみてください。被害が出てから慌てるのではなく、シーズン前の今こそ準備を進めておくことをおすすめします。