水稲資材

失敗しないために!水稲用育苗箱の種類と選び方を覚えよう

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「育苗箱なんてどれも同じでしょ?」

そう思ったことはありませんか?水稲用だろうが、野菜用だろうが種から苗にするためのトレイという意味では同じです。

ですが、育苗箱の種類を間違えると、

  • 水管理がうまくいかず苗が病気
  • 田植機にセットできない

という事態になってしまいます。

ですが自分の栽培スタイルに合った育苗箱を正しく選ぶだけで、作業の手間が減り、苗の揃いが良くなり、田植えの効率まで上がります。「苗半作(なえはんさく)」と言われるように、米づくりの半分は苗で決まるのです。

この記事では、水稲用育苗箱の全5タイプの特徴と違いを比較表付きで整理し、あなたの栽培に最適な一枚を見つけるための選び方を、ステップバイステップで解説します。初めて育苗箱を購入する方にも、買い替えを検討中のベテラン農家さんにも役立つ内容です。

元資材屋に勤めており、経験上様々なメーカーの水稲用育苗箱を実際に見て、売って、生のお客さんの声やメーカーの営業のお話を踏まえてお伝えいたします。どこにも縛られることなく忖度なくお話しします。

育苗で使う育苗箱・ポット・セルトレイなどの基本的な説明はこちらの記事

そもそも育苗箱とは?サイズ・規格の基本

育苗箱とは、主に水稲(お米)の苗を育てるために使うプラスチック製の浅い箱型容器です。水稲以外にも、野菜や花の種まき、セルトレイを乗せて運ぶアンダートレイとしても幅広く活用されています。

ただ今回は水稲用として使う場合に特化してお話いたします。

育苗箱の標準サイズはなぜ決まっているのか

水稲用の育苗箱には、全メーカー共通の「標準規格」が存在します。それは基本的に

内寸は長さ約580mm×幅約280mm×深さ約30mm(外寸は約600mm×約300mm)

で作られています。

この「幅約280mm」という数字は、田植機の苗載せタンクの幅に合わせて設計されたものです。つまり、幅が大体280mm以外の箱で育てた苗は、田植機にセットできないおそれがあります。育苗箱用の敷紙やラックなどの関連資材もすべてこのサイズ基準で作られているため、水稲用かどうか購入時には必ず規格を確認しましょう。

⚠ よくある失敗 ホームセンターなどで「育苗箱」として売られている園芸用の箱は、水稲用の標準規格とサイズが異なる場合があります。田植機を使う場合は、必ず「水稲用」と明記された規格品を選んでください。

育苗箱の種類を徹底比較【タイプ早見表】

育苗箱は、底面の穴の数や形状によって大きく2タイプに分かれます。それが

水稲用育苗箱の2タイプ

  • 稚苗用
  • 中・成苗用

用の2つです。さらに稚苗用にはそこが平面のものとクリスタルカットやダイヤカットと呼ばれるひし形上のくぼみがあるものがあります。次は穴の数です。穴の数は0から2700くらいまで様々な数があります。それらは大体2~3mmほどの穴で、数は稚苗用が少なめで、中苗・成苗用が多めになっています。

これらの違いが、水管理のしやすさ・苗の生育・作業効率を大きく左右します。ダイヤカットもタイプとしては基本は稚苗用ですが特殊な構造をしているのでわけて見るとこんな感じに表が作れます。

種類底面の特徴プール育苗敷紙向いている苗
① 稚苗用穴が少ない(0~200穴)◎ 最適不要〜推奨稚苗(若い苗)
② 中苗・成苗用多数の穴(約1300~2736穴)△使っているところもある必須中苗〜成苗
③ ダイヤカットダイヤ型の切込み・保水構造 穴数は500~1000◎ 最適不要稚苗(省力向き)

それぞれの特徴を詳しく説明していきます。

稚苗用育苗箱——プール育苗の定番

底面の穴が少なく全体的に穴が少なく、10穴、36穴、50穴、56穴、64穴、68穴、76穴などが広く販売されています。中には完全に穴がないノーホール(0穴)という規格もあります。

ただプール育苗向けであるプールタイプと呼ばれるものには、52穴や160穴と少ないないながら穴は空いています。

少なめの穴の理由としては、稚苗の段階では根がまだ十分に張っておらず土に絡みついていないため、水やりの際やプール育苗で水に浸した際に、土や肥料が箱の穴から外へ流れ出してしまうのを防ぐ目的で、穴の数が少なく設計されています

まだ根が十分に張っていない若い苗(稚苗)を育てる際、水やり時に土や肥料が流れ出るのを防いでくれるのが最大のメリットです。水を張って管理する「プール育苗」にも最適で、現在もっとも普及しているタイプと言えるでしょう。

中苗用・成苗用育苗箱——通気性重視の昔ながらのタイプ

底面に約1,300以上もの細かな穴が空いている、昔ながらの育苗箱です。裏面が平らで、通気性と水はけに非常に優れています。プール育苗に使ってないといえば嘘にはなりますが、殆ど使われていません。

穴が多いぶん病気の原因となる水の滞留を防げるのが強みです。さらに、穴から根が下の土へ突き抜けて養分を多く吸収できるため、苗を大きく育てたいときに力を発揮します。

ただ注意点として穴が多くて大きいため、そのまま使うと土や肥料が漏れ、根が箱の外に張り付いてしまいます。水稲で使用する場合は必ず底に「育苗箱敷紙」や新聞紙を敷いてから使用してください。

ダイヤカット(クリスタルカット)育苗箱——省力化の切り札

近年人気が高まっているタイプでクリスタルカットやクリーンカットとも表記されたりします。箱の底面にダイヤ型やクリスタル型のくぼみが入った特殊構造で、稚苗用の一種になります。

余分な水は排出しつつも、底面のくぼみに一定量の水を貯める仕組みにより保水力が高く、水やりの回数を大幅に減らせます。さらに、根がダイヤ状に絡んで箱内でしっかりまとまるため、敷紙が不要になり、田植機への苗セット時の「苗剥がし」も格段に楽になります。

ダイヤカット育苗箱は

ダイヤカットの特徴

  • 水やり回数の削減
  • 敷紙不要
  • 苗箱からの剥がしが楽

と省力化メリットが多く、人手不足に悩む農家さんを中心に人気があります。ただ

デメリットポイント

  • 完全に水稲用専用
  • 保水力の高さゆえカビが発生することも
  • ダイヤカットのせいで田植え機のタンクで滑りづらく、作業が滞ることも

といったデメリットも聞くことがありました。とくに3番目は根がダイヤ状(凹凸)に張るため田植え機の苗タンクで滑りづらくなるという話がありました。使用する際には注意してください。

ダイヤカット育苗箱
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育苗箱の選び方

種類がわかったところで、次は「自分にはどれが合っているのか」を考えていきましょう。下記のどれに当てはまりますか。

選び方のポイント

  • 大きな苗にしたい、野菜にも使いたい⇒中苗用
  • 省力化したい⇒ダイヤカット
  • プール育苗や密播で育てたい⇒稚苗用

この3つのそれぞれを選ぶべき理由を説明していきます。

大きな苗(中苗)を育てたい、野菜の育苗にも使いたい

「中苗用」にしましょう。

通気性と水はけが良いため、長期間の育苗でも病気の原因となる水の滞留を防ぎます。底の無数の穴から根が下の地面に伸びて養分を吸収できるため、苗を大きく育てるのに向いています。

また、水はけの良さを活かして野菜の苗作りにも併用できます。

作業の手間(水やり回数、敷紙の設置など)を極力減らしたい

「クリスタルカット(ダイヤカット)」がおすすめです。

底面のくぼみに水が貯まる(保水する)構造のため、育苗期間中の水やりの回数を減らすことができます。また、根がくぼみに沿ってしっかり絡むため、底に敷く「育苗箱敷紙」が不要になり、田植機にセットする際の苗剥がしも簡単になるなど、作業効率が大幅に向上します。

ハウス内で使うときはカビに注意しましょう。

プール育苗や密播中苗をしたい、オーソドックスでトラブルの少ない苗作り

「稚苗用」一択といってもいいと思います。

場所によっては育苗箱用敷紙をつかって中苗用育苗箱を使うところもありますが、 底の穴が少ないため、水を張って育てるプール育苗で使用しても、箱の中の土や肥料が外へ流れ出るのを防ぐことができます。保水性と透水性のバランスが良く、田植機の苗タンクの上で苗が滑りづらいといった機械トラブルも少ないため、オーソドックスな管理に適しています。

また密播苗でもマット強度がカギとなるため穴が少ないこちらを選ぶことが勧められています。

それぞれを表にまとめるとこんな感じになります。

種類メリットデメリット・注意点
中苗用・通気性、水はけが良い
・苗を大きく育てられる
・野菜の育苗にも使える
・水稲で使用時は敷紙が必須
・プール育苗に使っているところは少ない
クリスタルカット敷紙が不要
・水やり回数を減らせる
・苗マットが剥がしやすい
・カビが発生しやすい
・田植機上で苗が滑りづらい事がある
・ほぼ水稲専用
稚苗用・土や肥料が漏れない
プール育苗に最適
・田植機で悪さをしにくい
・中苗まで大きく育てるのは困難
・水稲専用(野菜には不向き)

ご自分の育苗方法(プール育苗かハウスでの散水育苗か)や、田植えのタイミング(どのくらいの大きさの苗を植えるか)、省力化をどこまで求めるかに合わせて、最適な育苗箱を選択してください。

次に1枚1枚は安くても、大量に使うためにすぐ壊れてしまうと出費がかさみます。そうならないためにもメンテナンス方法も頭に入れておきましょう。

長持ちさせるメンテナンスのコツ

育苗箱は大量に使うものですが、使い捨てではありません。ちゃんと洗浄して保管すれば、何年か繰り返し使用できます。替えを買おうとしても1枚単位ではほぼ売っていませんので結果出費はかさんでしまいますのでメンテナンス方法は覚えておきましょう。

基本的に使用済みの箱に土や根の残りが付いたまま保管すると、翌年の育苗で病原菌が発生するリスクが高まります。使用後は以下の手順でメンテナンスしましょう。

洗浄・保管の基本フロー

簡単に流れを説明すると

  1. 手作業または専用の「苗箱洗浄機」を使って土や根をしっかり落とす
  2. 乾燥させてから直射日光の当たらない場所に積み重ねて保管

洗浄時に底面の穴に詰まった土を丁寧に取り除くことで、翌年も均一な排水性能を維持できます。ただ、ひび割れや変形が見られる箱は、苗の生育ムラにつながるため、早めに交換するのがおすすめです。

まとめ:自分の栽培に合った育苗箱を選ぼう

今回のまとめです。今回は水稲育苗箱の5つの種類と、栽培スタイルに合わせた選び方を解説しました。最後に要点をまとめます。

育苗箱は底面の穴の数や形状によって「稚苗用」「中苗用」「ダイヤカット」の3タイプに分かれ、それぞれ水管理・通気性・作業効率が大きく異なります。

選ぶ際は、

選び方のまとめポイント

  • 育てる苗の大きさや野菜との併用
  • プール育苗や密播をするか
  • 省力化のニーズ

の3点を軸に判断するのがコツです。とくに高密度播種苗移植栽培やプール育苗を行う場合は稚苗用がおすすめ、省力化を重視するならダイヤカットが有力候補であることを覚えておきましょう。

「苗半作」——良い苗は、良い田んぼの第一歩。自分の栽培スタイルにぴったりの育苗箱を選んで、今年の米づくりを成功させましょう。

育苗箱やセルトレイ・ポットなど使う育苗資材の選び方はこちら

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