田んぼの畦畔(あぜ=田んぼの周りの土手部分)の除草、毎年の作業量に悩んでいませんか?
「年に何回も刈払機を担いで斜面を刈るのがつらい」「除草剤を使いたいけどドリフト(飛散)が怖い」「もっと楽に管理できる方法はないのか」こうした話は毎年のようにあります。
今回は田んぼや畑でできる雑草対策を方法別、それぞれの手順と注意点を簡単に説明していきます。それぞれについては詳しくまた記事を書いてきます。こういった方法があるとまずは知っておきましょう。
管理人は元ホームセンターのような資材店に勤務しており、除草剤・刈払機・グランドカバーの種苗まで幅広い農業資材を扱っていました。メーカーの営業さんから聞いた製品の裏話や、お客さんである農家さんの体験をもとに、田んぼの除草を効率化する3つの方法とその具体的な手順を解説していきます。
- 田んぼの除草剤散布の正しいやり方とドリフト防止の手順
- 刈払機の「高刈り」で斑点米カメムシを抑える除草テクニック
- カバープランツ導入で草刈り回数を年1〜2回に減らす手順
- SU抵抗性雑草に効かなくなった除草剤への対処法
- ドローンやロボット草刈機で省力化する最新の選択肢
除草の方法
除草の方法を大きく分けると3つに分けられ
主な雑草対策
- 除草剤
- 刈払い
- カバープランツ
となります。
ただ除草といっても直接除草するのは刈払い、つまり草刈りのみで、他はどちらかというと雑草対策という形になります。それぞれプロの農業作業に特化して、詳しくお話ししていきます。
田んぼや畑の除草剤散布の手順と注意点

田んぼや畑周りの除草で最も手軽で即効性が高い方法は除草剤散布です。ただし注意点があり、散布そのものよりも
- ドリフト(薬液の飛散)対策
- 抵抗性雑草への対応
の2点をクリアできるかどうかが、除草剤を安全かつ効果的に使えるかの分かれ目になります。
理由は2つあります。1つ目は、ドリフトによって隣接する作物に薬液が付着すると、残留基準値を超える事故につながるからです。こまつな・ほうれんそうなど軽量・小型の葉菜類は食べる部分に直接ドリフトを受けるため、残留基準を超えやすい作物の代表格です。2つ目は、同じ系統の除草剤を何年も連用すると「効かなくなってくる雑草」が出現するからです。
田んぼや畑での除草剤のまき方について、それぞれの場所に適した方法と、農薬を周囲に飛ばさないためのドリフト(飛散)防止対策を解説します。
水田(田んぼ)でのまき方
水田では、除草剤の成分を効果的に効かせるための「水管理」が特に重要になります。基本的には同じ注意点になりますが、各除草剤には特徴があるので、説明をちゃんと読んでから使いましょう。
水田での除草剤をつかったポイント
- 事前の準備: 除草剤は水の中で拡散するため、田面が露出していると十分な効果が発揮されません。丁寧な代かきを行って田面を均一に平らに整えます。また、稲の浅植えは薬害の原因になるため注意してください。
- 散布時の水位: 多くの除草剤(液剤など)は、落水状態にして水の出入りを止めてから、まきムラがないように均一に散布します。漏水がない水田に限り、雑草が水面上に出る程度の浅水状態(水深3〜5cmなど)で散布することも可能です。深水にすると効果が劣ってしまうので注意してください。
- 散布後の水管理: 散布後は、少なくとも3日間(浅水処理の場合は5日間)はそのままの水位を保ち、入水、落水、かけ流しを行わないことが鉄則です。また、降雨の有無にかかわらず、散布後7日間は落水を避けてください。
- 体系処理の実施: 雑草を確実におさえるためには、初期除草剤、一発除草剤、中期・後期除草剤を組み合わせて、雑草の生育段階に合わせた「体系処理」を行うのが効果的です。
これら注意点をよく守り、さらに除草剤の注意書きを理解してから使いましょう。
畑や非農耕地・畦畔(あぜ)でのまき方
畑では除草剤のタイプ(効き方)に合わせて散布方法を変えます。どんなものがあるかというと
- 茎葉処理型(液剤): 雑草の葉や茎に直接かけて枯らすタイプです。薬液がかかった部分から吸収されるため、雑草の生育期(草丈15〜20cm程度など)に合わせて、葉にしっかりかかるように散布します。水で希釈して噴霧器でまくものや、そのまま使えるシャワータイプがあります。
- 土壌処理型(粒剤など): 土にまいて、これから雑草の種が芽吹くのを長期間防ぐタイプです。雑草が発生する前や初期に、土壌の表面に均一に散布します。粒状なので、手軽に広範囲にまきやすいのが特徴です。
- 畦畔(あぜ)での注意点: 畦畔に根まで枯らす除草剤(グリホサート系など)を使い続けると、雑草の根がなくなることで畦が崩壊してしまう恐れがあります。そのため、葉や茎だけを枯らして根を残す「接触型」の除草剤(バスタやザクサ、プリグロックスなど)や、草丈を抑える「抑草剤」を使用するのがおすすめです。
というタイプに分かれます。ただどこで、どの雑草につかうかを注意して使っていきましょう。
ドリフト防止の具体的な手順
除草剤を散布する前に、以下の手順を毎回必ず実施してください。
手順①:風速を確認する
風速3m/秒以上の場合は散布を中止します。「少しくらいなら」という判断が、隣接地とのトラブルを招く最大の原因です。
手順②:散布圧力を1〜1.5MPaの低圧に設定する
散布圧力を上げるほど薬液の粒子が細かくなり、ドリフトリスクが飛躍的に高まります。低圧設定でノズルを雑草にできるだけ近づけて散布するのが基本です。
手順③:ドリフト低減ノズルに交換する
キリナシノズルなど、液滴を大粒にして飛散を抑えるタイプのノズルに交換するだけで効果は段違いです。資材屋で扱っていた経験から言うとノズル1つそこまで高くはないので、それでトラブルが避けれるという効果は非常に大きいです。
手順④:遮蔽物を設置する
隣接地に作物がある場合は、飛散防止ネットやベニヤ板、ビニールシートで物理的に遮断してから散布します。また、散布後はタンクとホースを十分に洗浄し、残留薬液による二次被害を防いでください。
一番は隣の農作物に被害が出る可能性があるということを念頭に置いて行動しましょう。
SU抵抗性雑草に除草剤が効かないときの対処法
「毎年同じ除草剤を使っているのに、最近アゼナやイヌホタルイが減らない」とたまに聞くことがありますが、その答えは毎年同じ一発除草剤という1回の散布で済む除草剤を使っているからです。
その結果SU抵抗性雑草(スルホニルウレア系除草剤に耐性を持つ雑草)というものができて効かなくなっているのです。同じSU系の一発剤を何年も連用した田んぼで除草剤が効かないアゼナ類が多発しているケースが典型的です。
対処としては、
異なる作用機序を持つ成分(プレチラクロール、ペントキサゾン等)を含む除草剤に切り替える
ことです。
または「初期除草剤+中期除草剤(または後期除草剤)」という組み合わせで除草剤を巻くことで、抵抗性雑草の発生を抑えられます。一発剤を使い続ける場合でも、抵抗性雑草に有効な成分を複数含む製品を選んでください。
刈払機による田んぼの除草手順|高刈りで斑点米カメムシも抑える

田んぼ周りの除草で最も広く使われているのが刈払機(草刈機)です。刈払機を使う場合は地面から約10cmの「高刈り」を徹底することで、法面保護と斑点米カメムシの抑制を同時に実現できます。高刈りについて詳しくはこちらの記事へ
高刈りが効果的な理由は、イネ科雑草(ヒエなど)の成長点を残さない高さで刈ることでイネ科の再生を抑えつつ、成長の遅い広葉雑草等を保護するからです。カメムシはイネ科雑草を住処にするため、イネ科を優先的に抑制することでカメムシの生息環境を制限できます。新潟県等の研究でもこの手法の有効性が示されています。
刈払機の安全な操作手順
刈払機による事故は深刻で、約5年間で医療機関ネットワークに寄せられた事故情報は29件、そのうち約半数が通院、約4割が入院を要する重傷でした。安全に作業するための手順を確認してください。
操作のポイント
①保護具を必ず装着する
保護メガネ(または防護面)、耳栓、防振手袋、すね当て、滑りにくい作業靴を着用します。
②刃の左側1/3で刈る
刃の右前方部分が障害物に接触すると「キックバック」(機体が右側に跳ね返る現象)が発生します。刃の左側1/3を使って一方向に刈り進めるのが基本です。往復刈りや大振りは事故の原因になります。
③周囲との距離を15m以上保つ
他の作業者との距離は15m以上確保します。接近する場合は笛等で合図し、刃が完全に停止してから近づいてください。
これらを注意して作業してください。
刈り時期と斑点米カメムシ対策のスケジュール
斑点米カメムシの被害を防ぐためには、刈払機での除草タイミングが重要です。
出穂10日前までに草刈りを完了させてください。 その後、収穫2週間前までは草刈りを禁止します。出穂後に畦畔の草を刈ると、居場所を失ったカメムシが一斉に本田(水田の中)へ移動し、稲穂を吸汁して斑点米の原因になります。
出穂後にうっかり畦畔を刈ってしまい、斑点米が急増したというケースがありました。タイミングを逆算してスケジュールを組むことが品質管理の基本です。
カバープランツで田んぼの除草回数を激減させるやり方

田んぼ周りの除草を根本的に省力化したいなら、結論としてカバープランツ(グランドカバープランツ=ほふく茎で地面を覆う植物)の導入が最も効果的です。
一度定着すれば草刈りが年1〜2回で済むようになり、従来の年4回の刈払機作業と比較して労力が半分以下になります。また根がしっかりと根付くため畔も崩壊しづらくなるというメリットがあります。
さらに導入にあたって畦畔の形状確保やカバープランツの植栽には「多面的機能支払交付金」が活用できます。
センチピードグラスとベントグラスの選び方
カバープランツの主力は
主なカバープランツ
- センチピードグラス
- ベントグラス
の2種類です。説明していきます。
センチピードグラスの特徴は生育旺盛で強固なマット状に広がり、歩いても滑りにくいのが特徴です。法面崩壊の防止効果が高く、中山間地の急傾斜地で長期維持したい場合に適しています。また地面を強固なマット状に覆うことに加え、「アレロパシー(他感作用)」という他の植物の成長を阻害する成分を出すため、非常に高い雑草抑制効果があります。ただし施工コストが高めで、寒さや積雪に弱いため標高の高い地域には不向きです。
ベントグラスの特徴は施工コストが安く、耐寒性が高いため冬場も生育を維持します。動力散布機で種を撒けるため大面積の施工に向いています。生育が早く、短期間で被覆の効果を実感でき、十分なマットが形成されれば草刈りが不要になる場合もあります。ただし暑さに弱く夏枯れのリスクがあり、施工適期が短い点に注意が必要です。
暖地の急傾斜ならセンチピードグラス、寒冷地や平坦な広い畦畔ならベントグラスという使い分けがおすすめです。
カバープランツ導入の具体的な手順(センチピードグラスの場合)
成功の鍵は「定植前に既存の雑草を完全に枯らすこと」です。雑草が残っていると、カバープランツが根付く前に雑草に負けてしまいます。軽く手順を説明すると
手順
- 事前除草
- 種まきor定植
- カバープランツの管理(水やりや肥料、育つまでの雑草刈り)
となります。
センチピードグラスなどは梅雨時期(6月中旬〜下旬)の定植、ベントグラスは8月中旬〜9月上旬が播種の適期と言われています。また防草シートを敷き、それからカバープランツを植えるという2重対策が一番効果的です。
ただ下記の点に注意してください。
畦畔を焼き払わない: センチピードグラスもベントグラスも一度焼くと再生しません。野焼きの習慣がある地域は特に注意してください。
低く刈りすぎない: 地際まで刈ると被覆植物が消滅し、数年かけた導入が無駄になります。
ドローン・ロボット草刈機で田んぼの除草を省力化する方法

除草剤散布・刈払機・カバープランツに加えて、スマート農業機器による省力化も選択肢に入ります。
農業用ドローンによる除草剤散布
ドローンを使えば、1haあたり約15〜30分で散布が完了します。従来の動噴作業と比較して所要時間は1/4〜1/8です。遠隔操作のため薬剤への接触・吸入リスクも大幅に下がります。
ただし導入コストは1台60〜200万円と高額で、農薬取締法に基づく登録がある薬剤しか使用できません。ただスマート農機購入に利用できるスマート農業設備の特別償却という制度もあります。
ロボット草刈機による自動化
またルンバのような自動草刈りロボットもあります。エリアワイヤーを敷設した最大3,000㎡の領域を自律走行しながら自動で草刈りと充電を繰り返します。3輪駆動で凹凸や勾配のある畦畔にも対応し、超音波センサーで障害物を検知・回避します。
エンジンを使わないためCO2排出ゼロで、ブラシレスモーター採用による静音性も住宅隣接地では大きなメリットです。PINコードによる盗難防止機能も搭載しています。
まとめ
さて今日のまとめです。
今日のまとめ
- 除草剤散布は即効性が高いが、ドリフト対策4ステップ(風速確認・低圧設定・ノズル交換・遮蔽物設置)の徹底が大前提
- 効きが悪くなったらSU抵抗性雑草を疑い、作用機序の異なる薬剤に切り替えるか体系除草で対応する
- 刈払機は「高刈り10cm」でカメムシ抑制と法面保護を両立。出穂前に刈り完了、出穂後は刈らないスケジュールが必須
- 刈払機の事故防止には保護具装着・刃の左側1/3での一方向刈り・周囲15m以上の距離確保を徹底する
- カバープランツは「2回除草→梅雨定植→高刈り管理」の手順で導入し、焼かない・低く刈らないの禁忌を守る
- ドローンやロボット草刈機は初期投資が大きいが、補助金などが出る場合もあり
田んぼの除草は「とにかく刈る」時代から「最適な方法を組み合わせて仕組み化する」時代に移っています。まずは自分の圃場の地形・面積・隣接環境を整理して、除草剤・刈払機・カバープランツの中から最も合う方法を選ぶところから始めてみてください。