果樹資材

ぶどうの傘掛けとは?意味・メリット・袋との違いと選び方

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「ぶどうの傘掛けって本当に必要なの?」「袋掛けと何が違うんだろう?」と悩んでいませんか。家庭菜園でぶどうを育て始めた方も、就農したばかりの方も、傘掛けの正しい知識がないまま作業すると、せっかくの果房を病気や日焼けでダメにしてしまうことがあります。

元ホームセンター系の農業資材店で働いていた管理人が、在職中に様々なぶどう資材メーカーの商品を扱い、メーカー営業さんから聞いた裏話や、実際ぶどう農家さんから伺った現場のリアルな声をもとに、ぶどうの傘掛けについて意味・メリット・デメリット・袋との違い・選び方まで徹底解説していきます。

この記事でわかること

  • ぶどうの傘掛けの意味と本当の目的
  • 傘掛けのメリットとデメリットの全体像
  • ぶどう袋との違いと併用したときの相乗効果
  • 品種や用途に合わせた傘資材の選び方
  • 作業効率を上げる道具と現場で評判のテクニック

ぶどうの傘掛けとは?意味と役割をわかりやすく解説

ぶどうの傘掛けとは、果房の上部に専用の傘状資材をかぶせて、雨・直射日光・病害虫から果実を物理的に守るための作業です。

なぜこの作業が必要かというと、ぶどうは多湿に弱く、雨水に含まれるカビの胞子が果房に付着するだけで「晩腐病(ばんぷびょう)」という壊滅的な病気を引き起こすからです。また、真夏の直射日光は果皮を焦がして「日焼け果(サンバーン)」を発生させ、商品価値を一気に下げてしまいます。

6月の摘粒(てきりゅう=房の形を整える間引き作業)が終わった直後にぶどう農家さんの多くが、購入されるのが傘資材でした。それだけぶどう栽培において欠かせない基本作業ということです。

傘掛けの3つの主な目的

ぶどうの傘掛けには、大きく分けて3つの目的があり

傘掛けの目的

  • 病害防除
  • 日焼けや裂果の防止
  • 品質維持

の効果があります。簡単に説明していきます。

まずは病害の防除です。特に晩腐病は雨水を介して感染が広がるため、傘で雨を遮ることが最大の予防策になります。傘掛けと袋掛けを併用した場合の晩腐病に対する防除価は95%に達するというデータもあります。

2つ目は日焼けと裂果の抑制効果です。果皮の温度上昇による褐変や、急な降雨で水分を吸って果実が割れる裂果(れっか)を防ぎます。

そして外観品質の維持です。果実表面の白い粉「ブルーム(果粉)」は鮮度の象徴ですが、雨で流れやすい性質を持ちます。傘掛けによってブルームを保護し、土埃や農薬の付着も防げます。

いつ傘掛けをするのが正解か

傘掛けの適期は、摘粒作業が終わった直後、かつ梅雨の長雨が本格化する前です。

具体的には地域にもよりますが6月中下旬頃が標準となります。農家さんから聞いた実例では、梅雨明けが早い年や猛暑が予想される年は「袋掛けより先に傘掛けを優先する」という判断をされる方が多いです。袋だけ先にかけてしまうと、強い日射で袋内温度が上がりすぎてしまうためです。

ぶどう傘掛けのメリット

ぶどう傘掛けの最大のメリットは、通気性を確保しながら病害と日焼けの両方を防げる点にあります。細かく言うと

傘掛けメリット

  • 通気性が高く蒸れにくい
  • 果実の育成を観察しやすい
  • 遮熱資材で温度も下げられる

といった効果も期待できます。

袋掛けと違って下部が開いているため、湿気がこもらず、果房周辺の蒸れを最小限に抑えられるのが特徴です。これは特に湿度の高い日本の梅雨〜夏季において、大きなアドバンテージになります。

簡単に説明していきます。

通気性が高く蒸れにくい

傘は見た通り、果房の上半分だけを覆うので下部から空気が流れ、湿気の滞留を防げます。

袋掛けだけで管理していて「うどんこ病」や「灰色かび病」を発生させてしまい、翌年から傘掛けを併用するように切り替えるケースも聞きました。蒸れの少なさは病害予防に直結します。

果実の生育を観察しやすい

傘の下から果房がのぞける状態なので、着色具合や肥大具合を一目で確認できます。

これは家庭菜園レベルでも非常に大きなメリットです。袋にも一部透明になっているものもありますが、袋を完全に外さなくても収穫時期の判断ができるため、作業効率と品質管理を両立できます。

遮熱資材を使えば温度を下げられる

タイベック製(高密度ポリエチレン不織布)などの高機能傘を使うと、果房周辺の温度を約5.5℃下げる効果があります。

近年の猛暑傾向によりタイベック製傘の需要が年々高まっています。特にシャインマスカットやクイーンニーナを栽培する農家さんからの引き合いが多いそうです。

ぶどう傘掛けのデメリットと注意点

ぶどう傘掛けにはデメリットもあり、「保護範囲が限定的」「擦れ傷のリスク」「作業負担が大きい」の3点が代表的です。

これらを理解した上で対策を講じれば、デメリットは十分にカバーできます。説明していきます。

横からの飛沫や害虫は防ぎきれない

傘は上からの雨を遮るのが主目的のため、構造上横殴りの雨や小さな害虫の侵入には対応できません。

傘だけで虫害は大丈夫かという質問も実際多いです。結果、スズメバチやコガネムシ、鳥などの食害を本気で防ぎたい場合は、傘掛けに加えて袋掛けの併用が必須になります。

風による擦れ傷(サビ)のリスク

風で傘が回転したりズレたりすると、穂軸(果房の軸)や果粒に擦れて「サビ」と呼ばれる傷がつくことがあります。

ただこれには対策があり、それはそのために開発されたのが「カサジゾウ」という固定器具です。穂軸にバネ圧で装着することで、傘が直接果房に触れるのを防ぎ、回転やズレも抑えられます。これは本当に人気で、このカサジゾウはよく購入されていました。

作業に膨大な労力がかかる

ぶどう一房ずつ手作業で傘をかけていく作業は、専業農家であれば1万房以上になることもあり、相当な労力です。

この負担を軽減するために、専用ホッチキスや作業補助具を活用するのが現場の常識です。後述する「作業効率を上げる道具」のセクションで詳しく紹介します。

ぶどうの傘掛けと袋掛けの違いを徹底比較

今まで読んでいただいた方は想像がつくと思いますが、ぶどうの傘掛けと袋掛けの最大の違いは、「保護範囲」と「通気性」にあります。

ですので両者は対立するものではなく、目的に応じて使い分けたり併用したりするのがブドウ栽培には最適となります。

傘と袋の役割の違いを表で比較

比較項目
主な目的雨よけ・日焼け防止防虫・防鳥・農薬付着防止
通気性非常に高いやや低い(微孔付きもあり)
観察しやすさ高い袋を開ける必要あり
害虫の侵入防止限定的高い
作業の順番摘粒後すぐ傘掛けの後または単独

最近は「袋掛けは省略するが傘掛けは絶対にする」という農家さんも増えているそうです。理由は人手不足と、シャインマスカットなど袋を使わなくても外観品質を保てる品種が増えてきたためです。

傘と袋を併用がおすすめ

晩腐病などの深刻な病害に対しては、傘と袋の併用が圧倒的に効果的です。

露地栽培における晩腐病の防除価は、袋のみで53%、傘と袋の併用で95%という結果が出ています。傘が雨を遮り、袋が微細な飛沫や害虫の侵入を阻止する二重の防御壁となるためです。

高単価品種を栽培する農家さんほど、傘と袋の併用を徹底されている傾向があります。1房数千円のシャインマスカットを病気で失うリスクを考えれば、資材コストは十分に回収できるという判断です。

ぶどう傘の選び方、それぞれの特徴と品種別による違い

ぶどう傘の選び方は、

選ぶポイント

  • 栽培品種
  • 気候
  • 予算

の3つの軸で決まります。

それぞれには明確な得意分野があるため、目的に合わない選択をするとコストパフォーマンスが大きく落ちてしまいます。それらを踏まえて

  • 蝋引き紙タイプ
  • タイベックタイプ
  • 色付きタイプ

の3種類を説明していきます。

パラフィン紙(蝋引き紙)の特徴

パラフィン紙は、紙の表面に蝋(ロウ)を塗布した最も伝統的で安価な傘資材です。

撥水性が高く、導入コストが低いため、家庭菜園から小規模農家まで広く使われています。装着時にどっちが表ですか?と聴かれることは多かったです。実は基本は雨を弾くようにロウを外側になのですが、どちらでもいいという人もいて、事実見解も2つあります。

一つの意見はロウが塗られたツルツルの面を内側(果実側)に向け、ザラザラの部分を外にすることで、風などで傘が果実に触れる際、果実への擦れ傷を防げます。

そして逆に必ず雨除け用のロウが塗ってある方を外側にすることと注意喚起しているところもあり、理由は雨を弾くという本来の目的を重視しているためです。

なので状況や天候などで決めましょう。

タイベック製傘の特徴

タイベック製傘は、デュポン社が開発した高密度ポリエチレン不織布を使った高機能資材です。家の壁下地材や屋根下地材、防草シートとしても使われている素材です。

光反射率が高く遮熱性に優れているため、袋内温度を約5.5℃下げる効果が実験によって出たという実績もあります。さらに耐久性が高く複数年使用できるため、長期的なコストパフォーマンスはパラフィン紙より優れています。メーカーの営業さんから直接聞いた話では、シャインマスカットやクイーンニーナを栽培する高単価品種農家さんでの採用率が特に高いそうです。

有色傘(緑・青など)の特徴

有色傘は、特定の波長の光を遮ることで、果皮の色合いをコントロールする目的で使われます。

シャインマスカットの「黄化(果皮が黄色くなる現象)」を抑制したい場合、緑色や青色の傘が有効です。590〜750nm(ナノメートル=光の波長の単位)の波長を遮ることで黄化を防げるためです。

ぶどう品種別の傘選び戦略

次にぶどうの品種による選び方です。主だった品種で言うと、

シャインマスカットを栽培する場合は、緑色や青色の有色傘を選ぶことで、黄化と「かすり症(果皮褐変障害)」を抑制できます。実際やはり傘掛けだけよりも袋掛けと併用したほうがかすり症の発生が少ない傾向があるとのことでした。

クイーンニーナなどの赤系品種は、着色に光が必要ですが高温に弱いという特徴があります。この場合は「透明袋+タイベック傘+白色反射シート」の組み合わせがおすすめです。タイベック傘で直射熱を遮り、白色シートで地表面からの反射光を取り込むことで、日焼けを防ぎながら着色を促進できます。

欧州系品種(マスカット・オブ・アレキサンドリアなど)は日本の湿気に弱いため、梅雨入り前のできるだけ早い段階で傘掛けを完了させることが重要です。

ぶどう傘掛けの作業効率を上げる道具とテクニック

ぶどう傘掛け作業の効率は、専用ホッチキスと固定器具の使い方で大きく変わります。

専業農家であれば1万房以上の作業が必要になるため、道具選びは疲労軽減と作業スピードに直結する重要な要素です。

プライヤータイプホッチキスの活用

100本の針を連続装填できるプライヤータイプのホッチキス(MAX HP-10など)は、傘掛け作業の定番道具です。

握り込んで使う構造のため、長時間の作業でも手の疲労が少なく、針の補充頻度も抑えられます。資材屋で扱っていた経験から言うと、シーズン前に必ずまとめ買いされる農家さんが多い人気商品でした。

指掛けリング付きホッチキスのメリット

同じMAXのホッチキスでもこちらがぶどうの栽培にはスタンダードです。指掛けリング付きのホッチキス(HD-10Dリング3など)は、ホッチキスを手に持ったまま両手で傘の形を整えられるのが最大のメリットです。

通常のホッチキスだと「傘を整える→ホッチキスを持ち替える→打つ」という動作になりますが、リング付きなら持ち替え不要でスムーズに作業できます。農家さんの間で評判だったのは、この時短効果でした。

カサジゾウで擦れ傷を防ぐ

カサジゾウは穂軸にバネ圧で固定する保護器具で、傘が直接果房に触れるのを防ぎます。

風による傘の回転やズレを抑え、サビ(擦れ傷)を防止できるだけでなく、傘の高さ調節も容易になるため、果房の肥大に合わせた管理がしやすくなります。

装着時の実践的なコツ

傘を装着する際は、中央の切れ込みに穂軸を差し込み、切れ込み部分を重ね合わせて円錐状に整えてからホッチキスで固定します。

注意点として、傘を急勾配に固定しすぎると、果実が肥大したときに内部スペースが足りなくなります。適度なゆとりを持たせることが、最終的な果房の品質を左右します。

まとめ

ぶどうの傘掛けは、高品質な果実を収穫するために欠かせない基本作業です。最後に重要なポイントを振り返ります。

本日のまとめ

  • ぶどうの傘掛けは「雨よけ・日焼け防止・ブルーム保護」が3大目的
  • メリットは通気性・観察性・遮熱性で、デメリットは保護範囲の限定と擦れ傷リスク
  • 袋掛けとの併用で晩腐病の防除価が95.4%まで上昇する
  • 資材は「パラフィン紙」「タイベック」「有色傘」の3種類が基本
  • シャインマスカットには有色傘、クイーンニーナにはタイベック傘が適している
  • 作業効率はプライヤータイプホッチキスとカサジゾウで大きく改善できる

まずは栽培している品種と気候条件を確認し、自分の栽培規模に合った傘資材を選ぶところから始めてみてください。梅雨入り前の準備が、秋の収穫を左右する重要な分かれ道になります。

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